(旧)週間買った本

2013年まではてなダイアリーに書いたもの。

プラトン・ファイト

佐藤哲也 『熱帯』

熱帯

熱帯

以下の部分を読むだけでも(笑える人には)買う価値があるかもしれない。立ち読みする価値は(笑える人には)必ずある。

画面では「プラトン・ファイト」が始まろうとしていた。
単調で野蛮な太鼓の音がスピーカーから流れ出し…

先入観のなく、好きな人にはこれだけで何が繰り広げられるかわかるのでは。

ここはアテナイ郊外、オリーブの樹が立ち並び鳥が歌うアカデメイアの神域であります。おっと、木陰から誰かが現われた。パレロン区のアポロドロスとその名無しの友人だ。

この口調で知っている人はわかる*1だろうし、もうプラトンがどんな人だかわからなくてもそのナレーションや画面を想像すればけっこう可笑しいことがわかるだろう。これがしっかり2ページ半も続く。このくだらないパロディがネットの掲示板などで読んだのなら、いくら笑えても、よく出来てるということで済むだろう。だが本屋の文芸の棚に並んだ、表紙にえらくかわいい水棲人などの描かれたハードカバーの小説(しかも書き下ろし)の最初の方に出てくるのだからまったく驚かされる。このパロディが小説の中で有機的に関連し重要な役割を果たしている…ということになったらもっと驚くかもしれないが。
それにしてもヒマだったら、この部分の映像化…は無理でも吹き込み…ってのも古いがそんな類のことをしたくなるほどである。ほんとうにくだらない。最後のソクラテスがハーレーで助けに来るところは過剰だと思えるぐらいで、そこまでやらなくても十分すぎるほど可笑しい。

*1:ウルトラファイト」は単調な太鼓の音をバックにしたタイトルコールで始まる。