(旧)週間買った本

2013年まではてなダイアリーに書いたもの。

『首塚の上のアドバルーン』

後藤明生 ISBN:4061976834
より、「ピラミッドトーク
まず前に書いた『挟み撃ち』の感想を訂正する。あれは素直でなかった。ハマったならハマったと書けばよかったのだ。
今日また読んで自分が恐ろしくツボを突かれていることを実感した。この短編の結び(どうもオチという表現さえ使えない)は私にとって、ぐうの音も出ない、と表現できるほどの、やられた、という感じを抱かせた。その理由は、実はあっさり言えなくもない。私は結びの直前で、この短編の題名でありかつ大部分繰り返されていた話題が何だったのか、忘れて読んでいたのである。忘れていたところでそれが使われてぽんと結ばれたので、最後その話題が現れた瞬間、ぐはっとか思ってしまったのである(だから一番最後の文章などはもうほとんど読んでいない)。『挟み撃ち』でも同じことがあった。忘れた頃に前の話題が出てくるようなことである。この前の話題を忘れているという事態は、作者のテクストが持つ構造によるのか、私の個人的資質によるのか。もちろん両方の要素があるにしろ、まったくどちらが強いのだろうか。