(旧)週間買った本

2013年まではてなダイアリーに書いたもの。

『オモライくん』永井豪 ISBN:4796603832

変わった版で安く手に入れる。各所になかなか再版されない理由となるであろう箇所がある。あと食事どきには読めないマンガである。オモライくんの食い物に関わる場面では、作者も顔を出して食欲が失せることを訴えるぐらいである。基本的にきたなさを笑うギャグマンガだが、作者の視点はおそろしい程に真っ当である。そして最初から考えていたのではと疑わせるような見事な最終回は、あろうことか思いだしただけで涙が出そうである。こうした題材を扱いきってギャグ、社会批判、実験性、涙まで結びつけている作者の力量は、もう感心するばかりである。
何故かこれを書いていた頃に復刊。 ISBN:4408612367


『幸せのひこうき雲安達哲 ISBN:4063350304
初出は「月刊ヤングマガジンエグザクタ」'97年7号から12号。古本屋でたまたま買う。キュウッとひとの(おそらく男性の)心を絞り上げていくような展開は『さくらの唄』と同様だ。連載時には扉絵であっただろう、1ページ使っている絵など印象の強いものも多い(表紙!)。もっとも最後にはなんか山本直樹のマンガにあったような強引な展開がある。ただ主人公の最後から2番目のセリフはなかなか気になるし、(安達哲独特とも言えるような人物の悪意ある書き分けの中で)最小限の眉毛、目、口で描かれた実の母の薄い顔はもっと気になる。読む人次第だが、あえて解釈するなら、前者は、一人の女性に小さい頃から(精神的にも肉体的にも)絡め取られる状況はけっして幸せではないことを示しているだろう。後者については、「自分の人生を生きるのにいそがしい」母親だったとはいえ、「前に進むことを恐れてはダメ」と話す母親は、たとえその時真意がつかめず遠いものに感じられたようであっても、肯定されるべき人として描かれているのではないだろうか。まあそれでも逆にも読めるし、幸せな状態についての問いはやっぱり難しい。