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- 作者: 宮沢章夫
- 出版社/メーカー: 白夜書房
- 発売日: 2006/07/18
- メディア: 単行本
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「かっこいい」は「AよりBがかっこいい」というようなある種の差異を示すものだから、当時の「かっこ悪い」ものを複数示してその中で「かっこいい」ものがこれだった、という形をいくつか作れば、当時の「かっこいい」とは何かを伝えられるのではないか。
著者は「かっこいい」の本質を明らかにしたいのではないのだから、はっきりいうとその仕方でしか当時の「かっこいい」を伝える方法はないし、著者も実際それを実践しているのだが、方法として明確にされていない。また誰も指摘しない。「それのどこが他に比べてかっこよかったんでしょうか?」という一見胡乱な質問がありさえすれば、著者は当時の「かっこいい」をよりはっきりさせられたのではないか。
この本で決定的にかけているのは地方の視点である。はたして80年代に東京のほかで「かっこいい」ものは生まれていなかったのか?現在よりも明らかに地域差が大きかった当時、東京しか「かっこいい」ものは存在しなかったのか?もし存在しなかったら(東京以外のものは「かっこいい」以外の表現をすべきだとしたら)余計に、当時の「かっこいい」は東京の「かっこいい」であった、と強調されなければならないし、そうでないなら東京がすべてであるように言ってはならない。