(旧)週間買った本

2013年まではてなダイアリーに書いたもの。

売っているのを見つけただけでも嬉しかった『ナボコフの一ダース』(サンリオ文庫版)を読み終わる。その中で気になった話を少し。「アシスタント・プロデューサー」という作品は実際の事件に基づいているらしいが、なぜか、エリック・ロメールの2003年の映画「三重スパイ」と同一の事件である。偶然10月ごろに神戸アートビレッジセンターで見ていて、だから事件の筋はよくわかった。逆の順序で知ったならもっとよかったのだが。さて、亡命ロシア人将軍の事件だからナボコフが題材としたのに疑問はないが、ロメールの映画はナボコフの短編を念頭に撮られたのではないだろうか。ひとつは将軍の妻が主人公であることと、ふたつめは小説は語り手の話し方に特徴があり(もちろん日本語訳によるのだが)一方映画は記録映像を挟むなどあくまで歴史的事実を解釈し映像化したという作りに特徴があるという、対比が意味有りげだ、という二点を根拠とする貧しい推測である。同一の事件が題材だから読んでいる可能性はいかにもありそうだが、この小説がきっかけで映画の構想を練った、ということならば面白いと思う。