たまたま買った本だが、この話は全体を一度知りたいと思っていた。新書なので細かい点は期待していなかったが、考古学界に少しは知識のある(専門的な話にストレスを感じない)、部外者が大枠を知るには丁度良い本だった。特に「なぜ周りが気づかなかったのか」ということに関しては、著者が自省しつつよく疑問に応えていると思う。学問的見地からおかしいと言われることはあったとしても、捏造ということとしては
微塵も疑われなかったという話は、学界の
性善説的状況を示していて、他の分野での偽装や証拠捏造などと共通する部分もある。もっとも、たったひとりが捏造を行ったことなど興味深い違いもあり、この本の追求するところではないが、藤村氏がどんな心理で何十年も捏造を続けたのかはちょっと知りたい気がする。